高嶋ちさ子さん(左)と中野信子さん(右)(撮影:宮崎貢司)
「キレるキャラ」でおなじみの高嶋ちさ子さんですが、本人はそこから卒業したいそう。しかし、高嶋さんとプライベートでも親交のある脳科学者の中野信子さんは、時にキレることは人間にとって必要だと言います。人が憤るメカニズムとその効能とは(構成=平林理恵 撮影=宮崎貢司)

家族を許せないと感じる理由

中野 お目にかかるのは1ヵ月ぶりでしょうか。

高嶋 今日はお仕事だから、不思議な感じがする。そのワンピース、とっても素敵。

中野 今日は「怒ってもいい」という話をしにきたので、洋服は怖くならないように華やかにしようかなと思って。……高嶋さん、最近何かにキレました?

高嶋 キレたてほやほやです(笑)。アメリカに留学している13歳の長男から、「スマホが壊れたから、新しいのを買って」とメールがきて。理由を訊くと、「スマホを空に放り投げて落ちてくるまでの動画を撮ってたら、地面に激突した」って。「ふざけんな! 親を金のなる木だと思うなよ!」と激怒しました。中野さんは、あんまり怒らなさそう。

中野 昨晩夫にキレましたよ。浴槽にお湯を張ったまま、4時間も「保温」で放っていたので。「ガス代がもったいない! 何回も注意しているよね?」と冷静に問い詰めたら、素直に謝ってくれましたが。

高嶋 私は子どもに怒ることが多いけど、夫に対してはないなあ。逆に、私が叱られるほう。うちは家のことを夫がやっていて、私は食べっぱなし、飲みっぱなしなので、毎日「片づけろ!」と言われています。夫は穏やかな性格なのに、私に対してだけ厳しい。何でですかね?

中野 それは、脳内物質のオキシトシンが関係しているかもしれません。この物質は愛情を感じると脳内で分泌されるので「愛情ホルモン」と呼ばれていて、いい面が強調されることが多いのですが、実は子どもをコントロールしたくなったり、ルール通りに動かない相手を許せないと感じさせたりもする。だから、他人が何をしても気にならないのに、近しい相手である妻に同じことをされると腹が立つんです。

高嶋 「愛情がない相手には怒ることができない」と私はつねづね思っているんですけど、夫もそうだったんですね。うちの場合、怒られなくなったら、夫婦の危機かも。気をつけなくちゃ。