日本式経営の柱と言われた「終身雇用」は見直され、年功や経験年数などにしたがって支払われていた報酬も、「成果」次第に。

「成果」は目に見える「成果」でなければならず、それをすぐ出せない人にはやめてもらうか給料を下げる。数字に表れない会社への貢献などもちろん評価されず、過去の実績は、なかったコトに。経費節減でしか利益を出せないのだから、いたしかたない。

そうした変化のなかで、たいていの組織にいた「何やってるかよくわからない人」、彼らは排除の対象となった。「何やってるかよくわからない人」は「なんだかすごい人」であることも多く、10年に1回くらい大きな仕事をしたりするものだが、そうしたナゾの人を擁している余裕は、企業にもうない。目先の利益のみに縛られ、〈小さく・低く〉なっていき、豊かさというものからは遠ざかった。

銀座でクラブや日本料理店を経営しているアイさん(52歳・既婚)は、その頃のことを〈企業に情緒がなくなった時代〉だと話す。

「仕事のあとにお酒を飲みながらあれこれ話して……といった交わりは、否定されるようになりました。夜の街の銀座なんてその最たるもの」

そもそも銀座のクラブは値段が高いといわれている。

主に男性であるお客が、女性であるホステス相手に「座って、飲んで、話して、数万円」。

「銀座のクラブは性を売り物にしていません。それなのに値段が高すぎるって、外国人なんかはクビをかしげますよね。すごく不思議に思うみたいですけれど、日本の会社はこの場所で商談することもあれば、人脈も広げる。ここを秘書室のように使って、長きにわたってビジネスをしてきた。銀座のクラブは世界中どの歓楽街にもない、日本独自のスタイルなのです」

平成バブル崩壊からITバブルまでの10年ほどの間に高まった「成果主義」の波は、そんな場所を容赦なく襲った。

「仕事に酒? そんなものはムダムダ、だらだらせずにやれないか? という方向へ。飲んで仕事になる人とならない人がいますよね。でも、とにかく〈目に見えないものは悪〉であると。

この頃はまだですが、やがて、銀座が罪びとであるかのように言われる時代さえやってきます。リーマン・ショックと、東日本大震災のあとには」