イラスト:飯田淳

 

1990年代に入り、日本に押し寄せたグローバル化の波。
私はその言葉を、担当作家から耳にした。
そして、それはこの国が築いてきたものを
大きく変えていく。20年かけて、じわじわと――

第18回 グローバル化

多くの企業がバブル崩壊後のツケの清算に追われていた一方で、ボス社はというと離陸したばかりの勢いある飛行機のように、上昇気流に乗って雲を突き抜けようとしていた。
「成果主義」や「効率化」とはほぼ無関係に、「とにかくがんばろう!」で、やっていた。

その時代、会社の中心にいた人――たとえば「彼女」が会社に居づらくなるのには、まだしばらく時間がかかる。

前回、アイさん(52歳・銀座でクラブや日本料理店を経営)が話してくれたことについて、考えている。

「(リーマン・ショックで)経営者はみなさん、迷ってましたよ。でも、あのとき迷っていた経営者たちも、いまはもう気づいた。毎晩、店に出ていて、そう感じます。売り上げだけではわからない職種もある。リーマンから10年かけて、いわゆるアメリカ式とは違うものを、日本の企業は作ったんじゃないですか?」

いわゆるアメリカ式――とは、〈グローバル化=グローバリゼーション〉、をさしているのだろうと思う。

よのなかのあらゆるシステムを、〈グローバル・スタンダード〉に合わせて変更していきましょう――リーマン・ショックが世界を覆う直前まで、およそ20年にわたり、私たちの国でも推進されてきた。

グローバル化がはじまった頃、私が担当していた作家のI先生が、頻繁にその話をしておられた。

「これからたいへんな時代になる」

私はI先生から毎日のようにその話を聞いていたので、グローバル化のことでアタマがいっぱいになった。やがてそれは「本」というかたちで実をむすび、先生の考えはベストセラーとなって広まることになるのだが、そのようにして作家と担当編集者たちの間で日々おこなわれている井戸端会議ふうの世間話から、作品が生まれることはままある。

私はボス社に移る以前から、I先生の仕事をしていた。

初めて雑誌で担当させてもらったのは、先生がお書きになったストーリーを漫画化するという仕事だった。