イラスト:川原瑞丸
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。SNSで見かけた侮蔑語に憤るスーさんは、その言葉の成り立ちを分析してみることに。するとその背景に浮かび上がってきたのは (文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)

透けて見えるもの

とある男性が、SNSで見知らぬ女性を「勘違いブス」と罵っていた。なんて嫌な言葉。

面と向かって言われたことはないが、陰でそう評されたことなら私にも何度かあるだろうし、恥ずかしながら、自分でも他者に対して使った過去があると思う。

最近ではやや鳴りを潜めたものの、いまだカジュアルに使われがちな侮蔑語だ。自分に向けられたわけでもないのに、驚くほどカッと頭に血が上った。「勘違いブス」がどんな時にどう使われるのか、丁寧にひもといていこう。意外と構造は複雑だ。

「勘違い」を辞書で引いてみると、『デジタル大辞泉』には「間違って思い込むこと。思い違い」とある。これ自体は人を貶める言葉ではない。しかし、その下に、主に女の容姿を貶める言葉「ブス」がつく。同じ構造に「性格ブス」があるが、これは性格が悪いことを、ブスという言葉で比喩的に表している。こちらも褒められたものではないが、「勘違いブス」よりは単純だ。