「日記にぶつくさ書きながら、ああだこうだ考えるうちに、たいていの問題は解決します。私の83年の人生で証明されているから、本当のことよ。(笑)」(撮影:本社写真部)
可愛らしい女の子のイラストで知られる、イラストレーターの田村セツコさん。癖のある髪の毛を2つに結い、「仕事着なのよ」と緑色のエプロンをまとったその姿は、まるでイラストから抜け出した少女そのもの。一人暮らしは楽しいけれど、まったく電話が鳴らないのも寂しいそうで──(構成=山田真理 撮影=本社写真部)

世界中の人たちが引きこもり生活に

私の仕事机の上には、小さなテレビが一つあります。それでニュースを見ていると、コロナの影響でただならぬ事態が起きていることがわかります。でも私の生活パターンは、見事なまでに変化ナシ。なぜかっていうと、もともと誰とも会わない生活だから。

人から見ると私って、ふわふわ遊んでばかりに見えるみたい。でも年に3回はどこかで展覧会があって、新作の油絵や立体のオブジェを制作しなければなりません。雑誌の連載も数誌あるから、83歳になった今もけっこう家で忙しく働いているんですよ。

外へ出るのは月に2回、池袋のカルチャーセンターで講座があるときなど。その後にランチに行くことはあるけれど、夜におしゃれしてレストランで女子会なんてまったく縁がありません。ですからコロナ禍で苦労している人には申し訳ないのだけど、今の自粛ムードが私には違和感ないのです。そう感じている人も、実は多いんじゃないでしょうか。

というのも最近知り合いの家に電話をしたら、そこの息子さんが出たのね。彼はコロナの前から長いこと学校に行けず、部屋に引きこもる生活を続けていました。そんな彼がとてもしっかりした声で、「電話があったと父に申し伝えます」なんて言うので驚いちゃって。すごく嬉しかったの。