イラスト:マルー

 

阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。コロナコロナで明けては暮れる毎日。制限された生活を送ってみて改めて、人は変化を望み、変化を繰り返しながら前へ進んでいくものと感じたアガワさん。さっそく行動を起こします。さてそれはいったいーー

もしもコロナ騒動が収束したら……。完全にウイルスが消滅することはないかもしれないが、とりあえず移動の不安や密接の恐怖から解放されるときが訪れたとしたら、真っ先にしたいことはなんですか?

最近、友達との会話にそんな話題がのぼるようになった。問われた私は、「そうだなあ」としばし考えて、

「ハワイに行きたい!」

答えたところ、同意した友達が複数いた。世界遺産巡りの旅をしたいという友もいた。とりあえず私の周辺では、どこか遠くへ行きたい願望が強まっているようだ。

「ね、行きたいよねえ」

頷き合う。若い人たちにはまだ望みがあるだろうけれど、前期高齢者である私なんぞは、「もう大丈夫、行ってらっしゃい」と言われる頃にこちらの足腰が危うくなっている可能性がある。海外旅行そのものへの気力体力が欠落しているとも想像される。だから私はこのところ、誰かに便りを出すとき、昔ハワイで買った古い絵葉書を取り出して、「もう訪れることがないかもしれないハワイの絵葉書にて失礼いたします」と書く。書いてから、少し寂しい気持になる。

「でもね」と、一人が発言した。

「実際にハワイへ行ける状況になったら、きっと日本人だけでなく世界中のハワイ好きがこぞってハワイを目指すだろうね。そうなったら観光客が溢れすぎて、そのせいでハワイ入国制限が出されるかもよ」

なるほど。ますますハワイは遠くにありて思うものか……。