写真を拡大 (撮影:岸隆子)
今週4月11日、東京宝塚劇場で雪組トップスター・望海風斗(のぞみ・ふうと)さんが有終の美を飾る。2017年にトップに就任してからというもの、洋物ミュージカルから時代劇まで幅広い作品でファンを魅了し続けてきた望海さん。東京公演より一足先、千秋楽を迎えた宝塚大劇場公演(2月8日)の際のレポートを配信する(撮影=岸隆子、取材・文=石橋法子)

晴れやかな笑顔でショーを完走

Music is my Life,宝塚 is my Life. 今までも、これからもーー。音楽の神様に魅入られた雪組トップスター望海風斗、が2月8日、退団公演の千秋楽を迎え、宝塚大劇場に別れを告げた。演目はミュージカル『fff−フォルティッシッシモ~歓喜に歌え!~』と、ショー『シルクロード~盗賊と宝石~』。

望海は『fff』で不滅の音楽家、ベートーヴェンとして生き、聴力をなくしてもなお音楽の可能性を探求する。クライマックスでは「もっと大きく!」と全身でタクトを振り上げ、劇場を歓喜の音色に染め上げた。

本公演は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で出演人数を制限したが、恒例のサヨナラショーでは雪組全員での出演が叶った。全15曲のうち、1曲目は「悪の華」。トップ就任の前年、故郷の神奈川公演で初めて主演した『ドン・ジュアン』からの選曲だ。稀代のプレイボーイに扮した望海は、次期トップスター、彩風咲奈(あやかぜ・さきな)演じる親友カルロと、荒々しく歌でバトルを繰り広げる。続く「Aimer」では一転、真実の愛を知った男の心情を切々と歌い上げ、緩急自在な歌唱が光った。

トップ就任の全国ツアー公演『琥珀色の雨にぬれて』で披露した「クロードとルイ」は、男二人の掛け合いソング。恋敵を演じる望海と彩凪翔(あやなぎ・しょう)が、小気味よく歌声を交わす。ショー作品『SUPER VOYAGER!』より「アンダルシアに憧れて」では、情熱的な男役の群舞で色気を放出した。

ともに退団するトップ娘役の真彩希帆(まあや・きほ)も三拍子そろった逸材だ。互いの名前から《希望コンビ》として愛され、最後のステージでもベストコンビぶりを印象付けた。望海が男役の集大成として挑んだ代表作『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』より「愛のひとひら」では、愛と哀しみのバラードに聴き入らせ、時代劇『壬生義士伝』より「石を割って咲く桜」では、芝居心に長けた二人が銀橋で見つめ合い、今は離れて暮らす夫婦の募る思いを歌にした。

真骨頂は『ファントム』のデュエット曲「Home」だろう。望海はモーリー・イェストンが紡ぐ温かな音楽に包まれた日々を「幸せだった」と振り返る。この日も、真彩の透き通るようなクリスタルボイスと極上のハーモニーを響かせ、音楽がもたらす幸せを観客と共に分かち合った。

終盤は全員で歌うビッグナンバーがそろった。大劇場お披露目公演『ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』の主題歌「ひかりふる路」は、人気作曲家フランク・ワイルドホーンの書き下ろし。歌手泣かせの大曲だが、望海は革命家の信念を声高らかに歌い上げた。フィナーレは望海自身の代名詞とも言える『Music Revolution!』より「Music is My Life」を。ファンがペンライトを点す予想外の演出に一瞬涙声になったが、「さぁ!」と鼓舞するように歌声を弾ませ、最後は仲間と一緒に大合唱。晴れやかな笑顔でショーを完走した。