特集映像のなかで、A医師は「神の手」と紹介されていた。他の病院で治療ができないと断られた患者でさえ、受け入れ、そして救ってきたということだった。私はいたく感動してしまった。私の場合は治療が出来ないと断られたわけじゃないから、希望が持てるなと勝手に納得した。映像を見続けていくと、病名を申告され、ショックを受ける患者と家族に対して、A医師がこう語りかけるシーンがあった。

「心臓病と診断されたり手術となると、死刑判決や有罪判決くらいショックを受けるでしょ、人間は。でも、心臓はもちろんのこと、体が元気になり、さらにそこから立ち直って、はじめて治療に意味がある。不安だと思うけど、大丈夫。任せて下さい」

私は感激のあまり、両手で口を押さえて、押さえつつも「素晴らしいっ!」と叫んでいた。そして、この先生が手術してくれるのか、ラッキー! と再び思って、いやいやいや、不運のなかのラッキーだからと考え直した。それでも、この映像を見たことでかなり勇気づけられたのは間違いない。

 

周囲は私の倍のスピードで動いている

そんなこんなで、ありとあらゆる事前情報を頭に叩き込んで挑んだ初診日だった。

大学病院最寄り駅からタクシーに乗った私だったが、病院入り口でタクシーを降りた瞬間、いきなり呼吸が苦しかった。重力が倍になったように感じられたのは、車を降りるという単純な動作でさえ、その時の私には負担だったということだろう。