第1回が配信されるやいなや、大きな話題になった翻訳家・村井理子さんの隔週連載「更年期障害だと思ってたら重病だった話」。47歳の時に心臓に起きた異変。入院後、苦しい経食道心エコー検査やカテーテル検査を乗り越え、病名は「僧帽弁閉鎖不全症」と判明。大学病院への転院を勧められ、一時退院した村井さんは、転院先の主治医が「神の手」と呼ばれる医師だと知る。診察初日、「あなたのケースは手術できます」と言われ、あっさり手術日も決まってしまう。「『兄の終い』の著者が送る闘病エッセイ第14回。

前回●不運の中のラッキー?〈神の手〉と呼ばれる医師が転院先にいた話

「心臓血管外科へ入院される患者さんへ」

主治医にようやく診察してもらうことができ、手術日まであっというまに決まってしまった。

あまりの展開の早さに、診察室から出て待合室で茫然自失の状態で座っていると、女性職員が資料をたっぷり持って現れた。あくまで明るくテキパキと、私に資料を渡しながら、入院時の注意点を伝えてくれた。彼女にとってはきっといつもの業務に違いない。何度も繰り返していることだから、スムーズにできるのだろう。それが私を勇気づけてくれた。

私と同じようにここで手術をする人が大勢いるし、今までも大勢いたのだろう。私はそのなかの一人に過ぎない。特別でもなんでもない。だから、私はきっと大丈夫だと思った。

『心臓血管手術を受けられる方へ』、『入院持ち物チェックリスト』、『入院説明書』、『入院のご案内』、これらの資料すべてを私に手渡しながら、「特にお忘れになっていただきたくないのは、こちらなんですね」と言い、「心臓血管外科へ入院される患者さんへ」と書かれたA4サイズの紙を見せてくれた。

「手術のときと、手術後のリハビリに必要なものが書いてあります。これを、入院当日までに必ずご準備していただきたいのです。一階に店舗がありますから、病棟に入る前にご購入下さいね。もしよかったら、今日、買って帰って頂いてもいいですよ。一階のコンビニの近くにお店がありますからね」

私は茫然自失のまま、手渡された紙を見た。そこには、

●ボリューメトリックエクササイザー
●術後パットマルチ(T字帯とパッドが一体となったもの)

と書いてあった。