イラスト:マルー
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。今回は『婦人公論』の表紙撮影の際のエピソード。篠山紀信さん撮影の現場に臨んだ阿川さんは、「誉め言葉」のシャワーを浴びて…

久しぶりに本誌表紙撮影の依頼を受けた。新聞で連載していた小説『ばあさんは15歳』が単行本になって刊行されるのを機にお招きいただいた次第である。と、さりげなく宣伝してみました。

それはともかく、考えてみたらこのような華々しい場で被写体になるのは久しぶりだ。単に私にそういうお声がかかっていなかっただけかもしれないが、にわかに非日常的な高揚感を覚える。

もちろん、コロナ禍になっても週刊誌の連載対談はずっと継続していたので、カメラの前に立つのは常のこと。でもそのときは自分メイクの自分衣装で、なにより主役はゲストである。さほど緊張することはない。いっぽうテレビの仕事では楽屋でプロのメイクさんに磨き上げていただき、プロのスタイリストさんに豪勢な衣装を用意してもらい、テレビカメラに囲まれ、ときに愛想良く、ときに真面目に、はたまたシワシワになるまで笑い、いずれの顔を晒しても、「自分が主役」という意識はない。あくまで進行役であり、「きれい!」に映してもらうことを主目的とする場ではない。

しかし表紙撮影となると、話は別である。主役というとおこがましいが、とりあえずこの雑誌の表紙に登場し、「さあ、今号も面白いですよ。寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」と読者の購買意欲をかき立てる一助とならねばならない。そう思うと、いい加減な顔はできないと緊張する。

もっとも、私よりはるかに重くその責任を担っているのは、この表紙担当となった編集嬢たちであろう。撮影してくださるのが業界屈指の大御所、篠山紀信氏であるとはいえ、篠山先生がカメラを抱えるまでの下ごしらえ、事前手配、雰囲気作りを完璧なまでに整えなければならないのである。

そこで彼女らは何をするか。