日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、いまの季節を彩る身近な植物を取り上げ、楽しく解説します。今回のテーマは「『杜若(カキツバタ)』カキツバタとアヤメの違いは?」です。

花びらのもとに特徴的な違いがある

 

「杜若」と「燕子花」ふたつの漢字名

「花かるた(花札)」の5月の植物は、湿地に幅の狭い板を折れ折れにつないでかけた橋である「八橋(やつはし)」とともに描かれている「菖蒲」です。読み方からすると、アヤメかショウブが考えられます。

アヤメは、日当たりのよい乾燥した土地に生えるもので、八橋のかかるような湿地に育つものではありません。

花札は、「花合わせ」という賭博に使われることもあり、この絵札は「勝負をかける札」という意味で「ショウブ」と読むという説もあります。しかし、ショウブは、サトイモ科の植物で、絵札のような花は咲かせません。

ですから、「菖蒲」は、アヤメでもショウブでもなく、「ハナショウブ」とされることがあります。ところが、ハナショウブは八橋がかかるような湿地に育たないといわれることがあり、もう一つ別の植物が浮かび上がります。

それが、カキツバタです。この植物の花は、明るい青みがかった紫色であり、5月に見ごろになります。この植物の漢字名は「杜若」です。杜若は、ヤブミョウガという植物に当てられた漢字名ですが、混同されて、「この植物に『杜若』という字があてられた」といわれます。

また、この植物は、「燕子花」とも表記されます。燕子花は、キンポウゲ科ヒエンソウ属の別の植物を指すという説もありますが、現在、燕子花という漢名はカキツバタに使われます。

カキツバタは、江戸時代、尾形光琳(おがたこうりん)により、金色の屏風(びょうぶ)「燕子花図(かきつばたず)」として描かれています。これは、愛知県知立(ちりゅう)市八橋で描かれたものであり、国宝となっています。この縁で、カキツバタは「愛知県の県花」に選ばれています。

カキツバタという名前の語源は、昔、この植物の花の汁で、布にかきつけるので、「掻きつけ花」、あるいは、「書きつけ花」とよばれたことです。この「カキツケバナ」という名前から、やがて「カキツバタ」となったといわれます。