人をひきつける文章とは? 誰でも手軽に情報発信できる時代だからこそ、「より良い発信をする技法」への需要が高まっています。文筆家の三宅香帆さんは、人々の心を打つ文章を書く鍵は小説の「名場面」の分析にあるといいます。ヒット作『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』の著者の連載。第3回は「恋のハードル」の名場面について……

第2回「《関係性が変わる》名場面:島本理生『ナラタージュ』」はこちら

『タイタニック』でいうとタイタニック号の沈没

物語のなかの恋愛といえば、ふたりに訪れる「危機」がいちばんの見どころだ。

つまりは、「ハードル」というやつである。

古今東西の恋愛物語を考えてみても、登場する「ハードル」は、枚挙に暇がない。『ロミオとジュリエット』ではふたりの間によこたわる、家同士の確執。『タイタニック』では、ふたりが乗るタイタニック号の沈没と身分の違い。世の中の恋愛物語は、ハードルがないと始まらないのだ!

だとすれば! さまざまな物語における「ハードル」の場面は、名シーンになり得るのではないだろうか?

ふたりのハードルを描く場面がちゃんと面白ければ、物語はぐぐっと盛り上がるはずである。

今回紹介する「ハードル」の場面は、『塩の街』というSF恋愛小説の一場面だ。

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