ロマンチック指数がピークに達する

『塩の街』という小説は、全体的にとてもロマンチックな物語だ。こんなに恋愛をロマンチックに描く小説、最近は珍しいなあと思ったりするくらい。そんなロマンチック恋愛小説のなかで、もっともロマンチック指数がピークに達するのが、このシーン。

ロマンチック名場面と名づけたいくらい。

まずは『塩の街』のあらすじを説明しよう。

舞台は、突然、世の中で「塩害」がひろまった世界。「塩害」とは、「感染すると人体が塩に変わって死ぬ」病気が流行している災害のこと。感染源もわからず、人々はなすすべもなく被害を受けた。

突然の塩害被害によって、東京は壊滅状態になっていた。

そんななか、両親を塩害で亡くした高校生の真奈は、自衛隊に所属していた秋庭に保護してもらう。真奈と秋庭は、塩害によって被害を受けた東京の街で暮らすことになる。

しかし秋庭のもとへ、友人の入江が、ある計画の誘いにやってくる。

文筆家の三宅香帆さん

いうまでもなく、この秋庭と真奈が恋愛になるかならないか、いやもうなるだろう、というテンションでこの小説は進んでゆく。

治安の悪くなった東京で、真奈は暴漢に襲われそうになる。そのとき秋庭が助けてくれる。そして真奈の住む家のないことがわかると、ふたりは行動をともにすることになる。……もはやふたりの恋にハードルなんてないんでは!? と思ってしまうほど、するっとふたりは行動をともにする。

そもそも物語の舞台設定が、災害という危機的な状況。ふつうだったら、「ふたりは壊滅した東京をどうにか生き抜き、ふとした瞬間に恋人になりました。めでたし、めでたし」という話で終わってしまうかもしれない。

しかし、ふたりの前にも「ハードル」は現れる。