イラスト:コーチはじめ
先祖代々の墓を守るというプレッシャーをかんじる、あの人と同じ墓に入りたくない……。お墓の悩みを抱える人は少なくありません。大石さん(仮名)は自分も妹もおひとりさま。「無縁仏になっちゃったらどうしよう」と悩む母に何も声がかけられないという。

管理費を払っても継ぐ人がいない

「無縁仏になっちゃったらどうしよう」

88歳になった母は眉間に深い皺を寄せながら私を見つめ、恐ろしそうに溜め息をついた。

20年前、アルコール依存症のうえ冷酷無慈悲で、母を殴ることを日課にしていた父が亡くなると、母は「同じ墓には入らない」と決意を口にした。父の骨を大分県にある父方の実家の墓に入れた後、自分と娘たちが入る墓を作るべく、母は乏しい年金からコツコツと貯金を始める。

そして80代に入って「そろそろ墓を用意したい」と言い出し、4年前に近くの寺の墓地に空きが出たので購入した。値段は墓石も含めて約300万円。私も4歳下の妹も、母の大願を叶えられた、と安堵した。幼少期から父に叩かれたり、アイロンを押しつけられたりして育った私は、男に恐怖心を持ち、結婚もしなかった。

妹も同じで、ゆえにわが家には子孫がいない。私自身は、正直なところ墓に強いこだわりはなかったが、病気がちな妹は喜んだ。「私はお姉ちゃんより先に死ぬと思うから、お母さんがいてくれれば安心」と。