片思いの、ひりつくような孤独に耐えられるのは

若いころ特有の、意味のわからない片思いパワー。なぜか恋愛至上主義になってしまう主人公たち。『愛がなんだ』が描くそれらの背後にあるのは、若さを持て余したエネルギーと、それを誰にもぶつけられない孤独だ。

たぶん、人はエネルギーが余ってないと、「好きな人が、ぜんぜん自分のことを好きじゃない」という孤独に耐えられない。体力がない状態だと、自分のことを好きそうではない相手を、わざわざ追いかけようという気にならない。つまり片思いをするってことは、孤独に耐えられる頑丈さを持っている証だ。

片思いの、ひりつくような孤独に耐えられるのは、心も体もちゃんと若いからだ。――『愛がなんだ』は、そんな若さをこれでもかと描く。

角田光代『愛がなんだ』角川文庫

『愛がなんだ』の、テルコとマモちゃんのエピソードは、どれもすごく良い。たとえばマモちゃんと飲んだ後の話。

テルコは内心マモちゃんの家にこのまま転がり込みたいと思っているのだが、そんなことを期待してはいけないと下心を抑え込む。深夜にたっぷりごはんを食べ、お酒を飲んだ後、マモちゃんとテルコは、タクシーを待つ。