ダンナには会わせたくない──。
 けれど、息子には会わせてもいい──。
 なんなんだよ、それ、と言いたい。夫と妻ありきの家族だろ、家族の出発点は夫婦じゃないのか、と諭したい。
 だが、ケンゾーは、得心したように言った。
「お母さん、おじいちゃんとおばあちゃんの介護が終わって、空っぽになったのかもね。で、それを埋めるものを探してるのかもね」
 ワケ知り顔の言い方に孝夫は少々鼻白んでしまったが、ケンゾーは「オレ、意外とくわしいんだよね、おばさんとかおばあちゃんのこと」と言って、自分のスマホの画面を見せた。
 ケンゾーの──というより、炎龍斗のインスタグラムだった。ギプスをつけた写真に、激励やお見舞いのコメントが付いていた。
「最初にコメントくれた三人、名前読んでみて」
「……けいこ、あつこ、みよこ」
「オレ、この三人に、ちょー推されてるの」
「推しって……ファンクラブみたいなものか」
「微妙に違うけど、まあいいや。で、三人の歳、いくつだと思う?」
 コメントは〈ホムホムの杖になりたい!〉〈困ったことがあったら教えて〉〈わたしが代わってあげたい〉──年齢など見当もつかない。
「三人とも、七十を過ぎてるから」
「──は?」
「追っかけセブンティーズだってさ、自分たちで言ってるの。三人とも、孫が小学生だけどさ」
 あきれて突き放しながらも、首をかしげて苦笑する顔には、微妙な照れくささも感じられる。
「合言葉があるんだ、あの三人」
 古希の「キ」は、希望の「キ」──。
「オレ、ああいう歳の人の、空っぽになったものを埋めたいパワーって、めちゃくちゃすごいと思ってる。思うっていうか、実感してる」
 だから──。
「お母さんも、そうかもね」
 腕組みをして言うケンゾーの表情は、孝夫がいままで見たことがないほど、おとなびていた。
(つづく)