《不確かな旅》2016年鉄枠、赤毛糸展示風景:「不確かな旅」ブレイン¦サザン(ベルリン)2016年撮影:ChristianGlaeser

 

塩田千春展:魂がふるえる

6月20日〜10月27日
森美術館
☎03・5777・8600(ハローダイヤル)

自らの命と向き合い
無数の糸に思いを託して

赤や黒の糸を張り巡らせた、壮大なインスタレーションで知られる現代美術家・塩田千春(1972-)。2015年に開催された第56回ベネチア・ビエンナーレでは日本館の代表に選抜されるなど、実力、人気ともにトップクラスのアーティストだ。本展は、約20年間にわたる彼女の活動を、森美術館の巨大な空間で紹介する、東京初、過去最大級の個展である。

なかでも印象的な作品は、舟のフレームに結び付けられた無数の赤い糸が展示空間を埋めつくす《不確かな旅》。塩田によると、舟は旅の象徴であり、赤い糸は、人と運命とをつなぐ、まさに「運命の赤い糸」であるという。舟の上には人影はみえないものの、ここに乗っている人々(あるいは彼らの魂)は、自らの運命を手繰り寄せながら、不確かな未来に向かって旅を続ける。そんな人生の旅路を象徴的に表現した作品だ。

《内と外》2009年古い木製の窓、椅子展示風景:ホフマン・コレクション(ベルリン)2009年撮影:SunhiMang

塩田は長年「不在のなかの存在」をテーマに、物理的には存在せずとも確かに感じる“気配”や“エネルギー”を意識しながら制作してきた。ベルリンを拠点とする彼女が、ベルリンの壁崩壊後の再開発ラッシュを目の当たりにし、廃棄された窓枠を何百枚も集めてつくった《内と外》なども、それを使っていた人々の記憶や感触が生々しく立ち上がってくる作品だ。

一昨年、塩田の体に、12年前に患ったがんの再発が確認された。「死と寄り沿いながらの辛い治療も、良い作品を作るための試練なのかもしれない」と彼女は言うが、自らの生や死にいやおうなく向き合わされる本人の心の葛藤は計り知れない。魂がふるえるような、言葉にならない感情から生まれた塩田千春の作品群。それらは今まで以上の凄みをもって、観る者に訴えかけてくることだろう。

 

ラファエル前派の軌跡

6月20日〜9月8日
久留米市美術館
☎0942・39・1131
※以降、大阪に巡回

ヴィクトリア朝美術の担い手たち

19世紀のイギリスを代表する美術評論家で、優れた思想家であったジョン・ラスキン(1819-1900)。風景画家ターナーの価値をいち早く見出し、またウィリアム・モリスらがアーツ・アンド・クラフツ運動を始める契機となった近代社会批判を繰り広げるなど、その慧眼や思想は当時のイギリス美術界に大きな影響を与えた。1848年に旧来の美術に疑問をぶつけた若い芸術家のグループ「ラファエル前派同盟」が結成された時に、彼らを高く評価し、擁護したのもラスキンだった。本展では、彼が支援し育てた、ヴィクトリア朝を代表する芸術家たちの作品を紹介する。

なかでも充実しているのは、ラファエル前派やその周辺の芸術家たちの作品だ。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》も本展を代表する作品のひとつ。胸をあらわにした官能的なヴィーナスはもちろん、彼女をとりまく花々の緻密な描写にも注目だ。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》1863-68年頃ラッセル=コーツ美術館©Russell-CotesArtGallery&Museum,Bournemouth

 

特別展
ゆかた 浴衣 YUKATA
すずしさのデザイン、いまむかし

〜7月7日
泉屋博古館分館
☎03・5777・8600(ハローダイヤル)

江戸時代から昭和まで
図案の妙を楽しもう

夏祭りや花火大会に華やぎを添える夏の風物詩・ゆかた。本展は、江戸時代に入浴後のくつろぎ着として着られるようになり、後に夏の気軽な外出着として定着したゆかたの歴史を、江戸から昭和までの各時代に制作されたゆかたや、染めの型紙、浮世絵などで紹介する。涼しい秋を先取りし、紅葉と筏を大胆に組み合わせた《白麻地紅葉筏模様浴衣》のように、ゆかたの魅力は、なんといっても図案の妙。遊び心あふれる粋なデザインを楽しみたい。

《白麻地紅葉筏模様浴衣》江戸時代18世紀前半個人蔵展示期間:〜6月16日