これは『蹴りたい背中』の終盤の場面なのだが、ハツはにな川を見ていて、「同じ景色を見ながらも、きっと、私と彼は全く別のことを考えている。こんなにきれいに、空が、空気が青く染められている場所に一緒にいるのに、全然分かり合えていないんだ」と思う。
これはつまり、にな川が、自分とちがう人間であることを実感する場面だ。こんなふうに同じものを見てても、違う存在なのだ、と。

冒頭では自分のさびしさの音を聴いていたハツだったが、にな川と出会うことで、はじめて他人――にな川が何を考えているかに思いを馳せる。

そして何を考えているかわからないにな川に対して、ハツは、背中に足を押し付ける。