誰もがこうやって卒業していく

当日は、それまで3週間、私の部屋を掃除し続けてくれた職員の男性にお祝いのおまんじゅうを頂き、そして心臓リハビリで仲良くなった患者さんたちに簡単にお別れを告げた。泣きそうだったから、あっさりと済ませた。

一緒にバイクを漕いだおじいさんも、リハビリがきっかけでとても仲良くなった女性も、すでに元気に退院していた。誰もがこうやって卒業していくんだなとしんみりした気持ちで、目標通り、私は荷物を段ボールに詰めて、1階にある事務所で帰り際に発送できるように準備した。自分はトートバッグだけで戻ることが出来るように、すぐにでも退院できるように。

荷物を段ボールに詰めて(写真提供:村井さん)

これからしばらく服用するための薬の到着と、会計の到着が済めばめでたく退院だ。入院してきたときに着ていた服を着ると、見事にブカブカになっていた。私がさらに一回りぐらい小さくなったからだった。

そんなブカブカの服を着て、バッグをひとつだけ持った私がいる病室に主治医のK先生とA先生がやってきてくれた。A先生はいつもの通り、糊がびしっと効いた白衣姿だった。「退院おめでとう」とにこやかに言うA先生。「君はいままで、相当苦労して生きてきたと思う。我慢も一杯して、諦めてきたことも多かったんじゃないかな。でも、これからは大丈夫だよ。元気で暮らしていくんだよ」と言ってくれた。