歩くことができる、それもとても簡単に(写真は愛犬のハリー。提供:村井さん)

これからは新しい人生を生きるんだよ

散々お世話になったK先生は、「それじゃあ、お元気で! 新刊、チェックしておきますから!」と笑って言ってくれた。A先生は病室から去る時に「これからは新しい人生を生きるんだよ」とも言ってくれた。

私を担当してくれていた看護師さんが薬と会計の紙、それから「退院おめでとうございます!」と書いた最後のスケジュール表を持ってきてくれた。私はそれを受け取ると、ナースステーションに挨拶をして、一人でエレベーターを降りて、会計を済ませ、病院を後にした。

少し寒かったが、病院を出た途端に、大丈夫だ、生きていけると確信した。なにせ、外の世界でも体が軽い。息が苦しくない。歩くことができる、それもとても簡単に。

しばらく自由に動く体で病院の入り口辺りを歩き、建物に別れを告げ、私はタクシーに乗って最寄り駅まで行った。ちなみに王将には立ち寄ったが何も食べられず、勝利のトロフィーのような餃子はテイクアウトにしてもらい、家まで持ち帰った。自宅の最寄り駅につくと、息子たちがスケボー片手にむかえに来てくれていた。

これが私の90日間に及ぶ闘病のすべてだ。

(終)

【この連載が本になります】
『更年期障害だと思ってたら重病だった話』
村井理子・著
中央公論新社
2021年9月9日発売

手術を終えて、無事退院した村井さんを待ち受けていた生活は……?
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