「ライバルになれない」残酷な関係

今回紹介するのは、そんな「理解」を前提としたライバル関係から、一歩踏み込んだ関係。

ライバルになりたいけど、なれない。そんな残酷な現実を突きつける場面だ。

辻村深月の小説スロウハイツの神様は、小説家や脚本家、漫画家など若きクリエイター(と、クリエイターの卵)たちが集まったシェアハウスを舞台にした作品だ。

その様子はさながらトキワ荘。管理人は、若いながらに売れっ子脚本家になった環。

環が友人のクリエイターたちに声をかけ、いっしょに暮らすことになった若きクリエイターたち六人。そのなかには、環のようにすでにプロとして活躍している者もいれば、まだ芽が出ていないクリエイターの卵もいる。

六人はお互い刺激を受けながら、一緒に暮らしていた。しかしある日、転機が訪れる。

環の学生時代からの友人であるエンヤが、ひとりだけ家を出ることを決めたのだ。

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エンヤは漫画家志望なのだが、環のようにプロデビューしているわけではない。

俺は絶対君に勝つ。エンヤはそう言って家を出て行く。

そんな彼に対し、環ははっきりと、否定の色を浮かべる。エンヤの声をきこうとせず、環はただ、怒っていた。その環の怒りが、同じくシェアハウスのメンバーである狩野に吐露されるのが以下のシーン。