こうして私は弟の冷たい視線を尻目に大型のビニール袋三つと紙袋四つに懐かしの衣服や母の着物を突っ込んで、さらに私がスペイン土産に買ってきた染め付けの花瓶をタオルに包み、他にもたんまり抱えるだけ抱えて自分の家に戻る。

質量不変の法則……。実家から減ったとはいえ、私の家に移動させただけのこと。これで整理したと言えるのか。

しかし、自宅に持ち帰って思い出の品を一つ一つ吟味していると、思いのほか、心が躍る。経年劣化は否めないところであり、特に衣類はファスナーの動きが悪かったり、袖口のほつれが激しかったりと、補修の余地はおおいにありそうだ。

久しぶりに裁縫道具の入ったクッキー缶を取り出す。針を持つことなど数年に一度、ズボンの裾を上げるときぐらいだ。私は日当たりのいいガラス戸のそばに座り込み、「サイケ」ワンピースの色に合わせて黄色い糸をたぐり寄せ、糸の先をよって尖らせてから針穴に通す。これがなかなか通らない。老眼鏡越しに睨みつけ、ようやく通ったところで、今度は糸を適当な長さに切り、端を玉結びにする。結んだ玉の部分ともう片方の糸端を握り、思い切り引っ張って、張った糸を指の先で弾く。こうすれば、ねじり癖のついた糸が伸びて、運針中に絡まなくて済む。

こういう裁縫の手順を私はいつ知ったのか。小学校の家庭科の授業のとき、あるいは母に教わったのかもしれない。

まずはボロボロにほつれたワンピースの襟元や袖口を丁寧に縫い合わせ、短すぎる丈を伸ばそう。