イラスト:MARUU
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。今回は、阿川さんちのベランダに迷い込んだスズメのこと。ほほえましく見守っているうち、さほど飛ぶ力がない子スズメがどうやってベランダまで辿り着いたのか、疑問に感じ始め――。

ある日、ウチのベランダにスズメがやってきた。二羽が戯れている。それまでベランダの手すりの上にとまっている姿はときどき見かけたが、内側の床まで降り立つことはなかったように思う。警戒心が強いと言われるスズメだが、たまには人家の近くまで遊びに来ることがあるんだなとほほえましく見守った。

するとその翌日、一羽のスズメがベランダのウッドデッキの上をチョンチョンとジャンプしながら往来しているではないか。よほどウチが気に入ったのかしら。にわかに興味が湧いた。観察するうち、どうやらチョンチョンと小さくジャンプしながら移動するそのスズメはまだ若いことに気がついた。

身体が細く、普通のスズメよりやや小柄に見える。ガラス戸に近づいても飛び去らない。というか、飛び去る力がまだないらしい。驚きはするものの、相変わらずチョンチョンと板の上を飛び跳ねて、そしてベランダの隅に置いてある植木鉢の後ろに姿を隠す。

だんだん愛おしくなってきた。