ずっと観察を続けたいがこちらも用事がある。仕事もある。しばらく目を離し、ふと気づいて見てみると、どうやら米を突いた跡があった。米の山が崩れていたのだ。食欲は旺盛のようだ。まもなく、水を飲むところも目撃できた。

「米は硬いんじゃない?」

「じゃ、ご飯にしてみるか」

「雑穀を好むみたいですよ」

秘書アヤヤ嬢を巻き込んで、家人総出でスズメブームと相成った。

こうしてスズメ観察が日課となった。朝、起きてはベランダに目を凝らし、ご飯の支度をしながらスズメの声に耳を傾け、時折、室内でテレビを観ていると、ベランダに置いてある椅子の縁にとまって興味深そうにこちらを覗いている子スズメの姿を発見する。

「一緒にテレビ、観たいのかなあ」

ますますスズメ愛が深まる。そのうち名前をつけた。水を替えたり米や胚芽米(わざわざ買ってきた)を置いたりするときに、

「すず子ちゃーん。ご飯の時間ですよぉ」

声をかけてみる。当然のことながら、喜んで飛び出してくるほど懐いてはくれない。人間がベランダに出て行くと、たちまちどこかへ隠れて見えなくなる。隠れているのか、すでに飛び立ってしまったのか。それがわからないからこちらは焦る。

「もう行っちゃったの? すず子ちゃーん」

諦めて室内に戻ると、

「あ、いたいた!」

植木の陰からチョンチョンと姿を現す。