動物と人間では、言葉がないからコミュニケーションなどないと思われるかもしれない。だけどそこにはたしかに、本人たちにしかわからなくても、通じ合う何かがある。それを小説で表現するには、こんなふうに、おもいっきり人間の目線を通した動物の姿を描くことに徹することで、可能になるのではないか。

『ことり』を読むと、人間相手では通じ合うことが難しかった小父さんの真摯なコミュニケーションが、ちゃんと小鳥相手だと通じていることが、わかる。

それは誰にも邪魔されない、たしかに魅力的な関係性のひとつなのだ、と小説を読むとしみじみ思うのである。

三宅香帆さんの連載「書きたい人のための〈名場面読本〉」一覧