イラスト:MARUU
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。今回は、人気メイクアップアーチストにインタビューをしたのがきっかけで、珍しくメイクに燃えているという阿川さん。時短メイク、ポンポン方式とは――。

私にしては珍しく、メイクに燃えている。ルンルン。こういう気持はきっと長続きしないとわかっている。でも今しばらくはこの高揚感に浸ってみようかと思う。

なぜそんな心境の変化が生まれたのか。

極めて単純な理由ではあるが、さる人気メイクアップアーティストにインタビューをして、ちょっとしたワンポイントアドバイスを受けたら、よし、試してみよう! とすっかりその気になった次第である。

世のオジサンのごとき発言をするならば、そもそも私は顔に何かが塗られているだけで鬱陶しくなる。できればずっとスッピンでいたい。しかし仕事柄、そういうわけにもいかない。もとよりスッピンに自信があるわけではない。だから仕事や用事で出かけるときは最低限の礼儀として化粧をせざるをえない。

ありがたいことに、テレビの仕事をするときはプロのメイクさんが私の顔と髪の毛を念入りに仕立て上げてくださる。私は鏡の前に座り、されるがままおとなしくしていれば、ほどなく見違えるほどいい女に変身……というか変顔(ヘンガン)しているというわけだ。

「はい、お待たせしました」と言われて改めて鏡に映る己の顔を見てみると、まあなんて美しいの? ってほどでもないが、少なくともスッピンのときとは大違い。やっぱりメイクは大事ねと、その瞬間は確かに自覚する。しかし、それを自分で実践するかといえば、なかなかできないのである。