イラスト:MARUU
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。今回は、コロナワクチンの接種について。実況中継のような証言が次々に重ねられ不安が募りつつ、大規模接種会場へ。そこで出会った黄色いポロシャツ軍団とは――。

※本記事は『婦人公論』2021年8月24日号に掲載されたものです

本日、いよいよ二回目のワクチンを打ってまいります。

ここに至るまで、前期高齢者同世代のグループLINEで頻繁に情報交換が行われた。

「大規模会場に行ってきました。二時間、行列に並んで無事に一回目終了」

「おめでとう! 私は明後日」

「ウチは夫婦とも、まだ予約が取れない状況。電話がなかなかつながらない」

「ウチは息子にパソコンで取ってもらった」

実況中継のような証言が次々に重ねられていく。遅れて打つ者にとってささいな情報も見逃せない。ただしかし、副反応に関しては千差万別らしく、高齢者はさほど強く出ないと世間で言われながら、特に二回目接種のあと同世代からもけっこう発熱して苦しんだという話が届くので、打つ前の身としては不安が募ってくる。

知らぬが仏。事前情報を何も持たずに接種するほうが気楽でいいかもしれない。これから接種の段階に達する若い人々に、伝えるべきか、伝えないほうが御身のためか……。

と、迷っているふりして、こんな経験は死ぬまでそうそうあるものではないので、やっぱり書いてみることにしましょうね。今回のワクチン接種はインフルエンザの予防接種とは規模も中身も違う。なにしろ世界中が、時間差の程度はあるにしろ、一斉に接種に乗り出したのである。

とはいえ開発ホヤホヤのワクチンだ。このワクチンを打てば本当にコロナに感染しなくなるのか。変異株にも効くのか。それこそ副反応で身体の具合が悪くなる恐れはないのか。それらに関する正確な検証結果は、データが揃う数年先を待つしかない。となれば、「きっとワクチンは効くだろう」と信じ、祈るしか手立てはないと思われる。