日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、いまの季節を彩る身近な植物を取り上げ、楽しく解説します。今回のテーマは「【金木犀】強い香りを放つ三大芳香花」です。

 

秋の訪れを感じさせてくれる香り

キンモクセイの香りは、「秋の香り」といわれ、小さく黄金色の多くの花から漂う甘い香りは、秋の訪れを感じさせてくれます。ただ、秋の香りとはいいますが、秋の間中、香っているものではありません。地域によって香る時期はずれるでしょうが、私の住んでいる関西地方では、10月の上旬、香るのは10日間ほどだけです。

この植物の英語名は、その強い香りゆえに、「香るオリーブ」を意味する「フレグランス・オリーブ」です。香りが強いので、「九里離れた場所まで漂う」という意味で、この植物は、中国名で「九里香(キュウリコウ)」といわれます。ただ、日本の一里は約四キロメートルですが、中国の一里は約400~500メートルですから、約3600~4500メートルに花の香りが飛ぶという意味です。

この植物は、春のジンチョウゲ、初夏のクチナシとともに、強い香りを放つ「三大芳香花(ほうこうか)」です。ジンチョウゲは「七里香(シチリコウ)」といわれるので、昔の人々は、キンモクセイの花の香りは七里香よりも強いことを、感じていたのでしょう。

この植物は、トイレのそばに植えられているといわれます。たとえば、公園の公衆トイレの横にキンモクセイがあります。「香りが強いからトイレの臭いを消すため」といわれます。でも、そんなことはないでしょう。キンモクセイの香りは、10日間ほど香るだけですから、トイレの横に植えておいてもトイレの臭いはごく短期間しか消すことはできません。