誰かの声に反応して視線を上空へ向けると、はるか彼方に灰色の塊が……、煙? それともカラス? といぶかっているうち、灰色の塊があっという間に一糸乱れぬ三角形の編隊となって急接近してきた。機体のお尻から吐き出される白いスモークがときおり虹色に変わり、まるで青い夏空のキャンバスに色鉛筆で線を描くがごとく、まっすぐ清々しく伸びていく。

「すごーい! 鳥みたい~!」

「きれい~。虹みたい~」

ユリカちゃんも他の子どもたちも興奮して歓声を上げる。大人はもっぱらスマホを睨みつけ、その雄姿を記録に残そうと機体を追う。

私も急いでスマホをカメラモードにセットして画面を空に向けるが、周囲が明るすぎるせいか老眼ゆえか、画面の中に六機編隊を認めることができない。あ、どこどこ? と言っているうちに、六機の飛行機は雲のかなたに消えた。

「どっかに行っちゃったよぉ」

「どこに行ったんだろうねえ」

ユリカちゃんと一緒に顔をしかめて必死で空を見上げるが、その姿はない。音もしない。屋上に集まっているマスク顔の住人たちも、ブルーインパルスの姿を求めてあっちへうろうろ、こっちへうろうろ。と思っていると、突然、

「あ、戻ってきた!」

またもや声がして空を見渡すと、雲のうしろから小さな機体の影が現れた。しかし飛び方が違う。三角形の編隊はどこへやら。一機ずつが離れていく。いよいよ五輪を描く準備に入ったか。スマホを構えて待機する。が、円を描き始めたスモークが薄灰色の雲に紛れてよく見えない。

え、どれどれ? 逆光で見えないぞ。騒いでいるうちに、またもや撮りそびれたが、この心躍る感覚は、遠い昔を思い起こさせる。