来る2023年、中公文庫は創刊50周年を迎えます。その記念プレ企画として、本連載では「50歳からのおすすめ本」を著名人の方に伺っていきます。「人生100年時代」において、50歳は折り返し地点。中公文庫も、次の50年へ――。50歳からの新たなスタートを支え、生き方のヒントをくれる一冊とは? 第1回は、社会学者の橋爪大三郎さんに伺います。

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)

1948年神奈川県生まれ。大学院大学至善館教授。東京工業大学名誉教授。著書に『はじめての構造主義』『世界がわかる宗教社会学入門』『これから読む聖書 創世記』『これから読む聖書 出エジプト記』、社会学者・大澤真幸氏との共著に『ふしぎなキリスト教』(新書大賞2012を受賞)ほか多数。

途中で挫折しない読み方とは

日本人はあまり聖書を読まない。大人になっても家に聖書がない。とんでもないことである。人類文化に対する冒涜だ。自動車にカーナビがついていないようなもの。まず一冊、買いましょう。と言っても、どれを買えばよいか。

日本語の聖書は、日本聖書協会のが定番である。文語訳、口語訳がある。最近まで新共同訳を、どの教会も使っていた。数年前に協会共同訳というのが出た。これがよいでしょう。旧約・新約の合本を買うこと。

さて、どこから読めばよい?

まずは福音書だ。新約聖書の最初がそれ。イエス・キリストについての記録である。

福音書は四冊あって、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ。順にマタイから、と思って読み始めると挫折しやすい。長い系図から始まるので意味がわからないし退屈だ。そこでマルコから読もう。マルコは最初に書かれた福音書で、素朴でわかりやすい。そのあと、マタイ、ルカを拾い読みする。続けて使徒言行録を読もう。使徒言行録は、ルカの福音書の続きになっている。聖霊も登場するので、そこをしっかり読む。

その次は、旧約聖書の創世記を読もう。天地創造の話、アブラハム一族の話、ヤコブの息子たちの話。創世記のあとは、出エジプト記。預言者モーセの登場だ。モーセはシナイ山で神ヤハウェと出会い、その命令で、イスラエルの民をエジプトから導き出す。

そこから飛んで、ヨシュア記、士師記を斜め読みしたら、列王記を読もう。ダビデ王やソロモン王が活躍する。そのあと王国が分裂し、身勝手な王たちが神に背き、国を乱す。