日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、いまの季節を彩る身近な植物を取り上げ、楽しく解説します。今回のテーマは「【稲】風に花粉を運んでもらう植物」です。

イネの花には花びらがない

一般的な植物の花には、花びら(花弁)があります。これらの花とイネの花の大きな違いは、イネの花には花びらがないことです。美しくきれいな花びらの役割は、花粉を運んでもらうために、ハチやチョウチョなどの虫を誘い込むためですから、イネの花に花びらがないということは、ハチやチョウチョに花粉の移動を託さないということです。イネは、風に花粉を運んでもらう植物なのです。

イネでは、五ミリメートルぐらいの小さな花が穂のように密に並んで咲きます。一つの花には、六本のオシベと一本のメシベがあります。開花している時間は短く、多くの品種で、午前中の二時間くらいです。

イネは、オシベにできる花粉の移動を風に託しているだけでは、不安なのでしょう。そこで、イネは、風に託すだけではなく、開花するときに自分の花粉が自分のメシベについてタネ(おコメ)ができる「自家受精(じかじゅせい)」という性質をもち合わせています。