『銀橋』中山可穂・著、角川文庫

トップスターになった男役とまだまだ未熟な下級生

女たちの師は、ある意味、身近な先輩である。年齢でいうと、離れていても十歳くらいの違いでしかない。

たとえば先ほど挙げた『こころ』で描かれたような先生と僕の年齢程は、離れていない。『スター・ウォーズ』にしろ『ドラゴンボール』にしろ、師匠というとかなり年上のイメージが強いかもしれない。

しかし『銀橋』に登場する師匠は、そこまで歳の離れていない先輩だ。――そんなとき、どうやってその師弟関係を描くのか? 次に紹介するのは、『銀橋』の主人公のひとり、男役トップスターの花瀬レオ(通称レオン)が、下級生達に檄を飛ばす場面だ。ポイントは、師匠と弟子の、遠さ、である。

「今日からおまえの神だ。」と言うほどの、圧倒的な距離の遠さ。はたしてこの世で神と人間くらい遠い存在がいるだろうか。

前述したとおり、レオンはトップスターになった男役だ。それに対して、あわじくん(これもあだ名である)は、まだまだ未熟な下級生として登場する。

レオンの台詞も、あわじくんのありかたも、ふたりの間にある遠さを読者にわからせる。
この場面は、物語のなかにおいては、レオンがあわじくんに「今日からきみの師は私だ」と宣言する場面だ。しかし同時に、ふたりの間にある遠い距離を、読者に示す、という効果ももたらしている。