エネルギーと温暖化の問題

エベレストへの挑戦は、成長するための通過点でした

竹内多くの難関を乗り越えて、見事に目標を達成した南谷さんですが、8000m級の山への挑戦はいったん卒業するそうですね。

南谷私にとって、エベレストへの挑戦は、自らを知り、成長するための一つの通過点でした。ですから、これからは、山で得た学びや経験をいかし、人々や社会の役に立つ活動にも参加していきたいのです。私がアンバサダーを務める「NPOみらいの森」での活動はその一つで、児童養護施設で暮らす子どもたちとアウトドアで一緒に過ごし、その成長をサポートしています。ほかには、地球環境問題に関心があるので、北極圏や山で目の当たりにした地球温暖化の影響など、私が受けとった自然からの警告を多くの人に伝える活動もしたいですね。

竹内温暖化は人類にとって喫緊の課題です。日本も「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする」という、いわゆる「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。でも、CO2を多く排出する火力発電が全体の約8割を占めている日本の現状を考えると、これはかなり厳しい目標です。

南谷温暖化問題を解決するには、CO2を排出しないエネルギー源が必要です。私は、そのひとつである核融合に興味がありますが、かなり難しい技術だそうですね。

竹内核融合については、人工の太陽を作り出すようなものですから、人類の叡智を結集しても、実現には半世紀以上かかると言われています。

南谷温暖化の魔の手が迫っているのに、半世紀も待つ時間はないはずです。そうすると、日本が持つ最先端技術である地熱発電など、再生可能エネルギーに期待したいですね。

竹内日本の再生可能エネルギーの技術は、めざましい発展を遂げています。ただ、それを主力電源とするには、まだまだ多くの課題があるのです。天候に左右され不安定であること、日本には適地が少ないことに加え、再生可能エネルギーの不安定な発電量をカバーするには、別の電源での調整も不可欠。蓄電池で調整する方法もありますが、性能面、費用面からまだ現実的ではありません。ですから、今の日本では、再生可能エネルギーの課題を克服しながら、CO2を排出しない原子力を含め、バランスのとれたベストミックスの電源構成を目指し、火力発電の割合を低くしていくことが必要です。

南谷竹内さんのお話をうかがって、すごく勉強になりました。エネルギーと温暖化の問題は切っても切れない関係で、その両方を解決していくのは容易なことではありませんね。私たちは、まずその現状を正しく知る必要があると思います。 私も、自分が目にした地球環境の現状とともに、テクノロジーの果たす役割や現実も一緒に伝えていきたいです。そのうえで、温暖化の解決に向けた日本の技術力に期待したいですし、核融合の開発も、日本が主導し、早期の実現を目指してあきらめずに進んでほしいですね。

竹内そうすれば、僕の孫たち、南谷さんの子どもたちが生きる未来には、環境問題のない持続可能な社会が実現しているに違いありません。

南谷未来に向けて、自分に何ができるのか、これからもじっくり考えていきたいと思います。

竹内南谷さんのような若い世代が環境問題と真剣に向き合う姿は、社会に大きな影響を与えますから、その取り組みをぜひ続けていただきたいです。南谷さんの挑戦は、これからも続くと思いますが、いつも応援しています。本日は、本当にありがとうございました。

南谷 真鈴(みなみや・まりん)

1996年神奈川県生まれ。幼少時から約12年間海外で生活。2016年5月、日本人最年少の19歳5ヵ月でエベレスト登頂。同年7月北米デナリに登頂し、日本人最年少のセブンサミッター(世界七大陸最高峰制覇者)となる。17年4月北極点に到達し、「探検家グランドスラム」(七大陸最高峰・北極点と南極点到達)を世界最年少で達成。著書に『冒険の書』『自分を超え続ける――熱意と行動力があれば、叶わない夢はない』がある

竹内 薫(たけうち・かおる)

1960年東京都生まれ。「科学応援団」として、テレビ・ラジオ、講演などで活躍中。2016年にトライリンガル教育を行うYESインターナショナルスクールを開校。『10年後の世界を生き抜く最先端の教育』(茂木健一郎さんとの共著)、『中高生の悩みを「理系センス」で解決する40のヒント』、『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』(訳)ほか著書多数

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