ぐっとふたりの「家族っぽさ」が増す名場面

これは雄一が床みがきをして、みかげが洗い物をしているシーンである。

「家族」を描いたシーンとして、ものすごい名場面だと思う。

ともすると、同棲し始めたカップルの仲の良い場面に見えるかもしれない。ふたりで一緒の歌をうたっている。それも、雄一が歌い始めた鼻歌に対して、みかげが「知ってる」と反応する。相手のなんとなく歌い始めた曲を自分も知ってて、なんだっけと言いながら一緒に続きを歌う……、なんて幸福な風景でしかない。

しかし吉本ばななは、これをただ歌わせるのではなく、雄一には床みがき、みかげには洗い物という役割分担を課している。この役割分担があることで、実はぐっとふたりの「家族っぽさ」が増しているのではないか、と私は考えている。