『キッチン』吉本ばなな・著、新潮文庫

ただ、分かち合うことに、意味がある

家族とはたぶん、何かを掛値なしに分かち合う人のことだ。

役割分担というのは、何かひとつのもの――たとえば一緒に暮らしているその生活そのものだったり、金銭的なことかもしれないし、お互いの人生そのものみたいなものかもしれないが――を分け合うことによって発生する作業だ。分かち合うからこそ、そこに役割が発生する。あなたとわたしで違うことをして、何かひとつのものを完成させる。

たとえばみかげと雄一であれば、一緒に暮らす家を快適に保つということを、それぞれ役割分担して家事をおこなうことによって、分かち合っている。

そして分かち合うことそれ自体に、約束が発生する。会社との契約のように、何かを目的として役割分担をしているわけではない。ただ、分かち合うことに、意味がある。分かち合うことそのものが、家族の営みであり、家族の証だ。――『キッチン』はそう告げているように、見える。

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だから『キッチン』を読んでいるとき、このシーンが胸に迫ってくるのだと思う。

みかげは、何の違和感もなく、さらりと雄一と家事を分担する。それぞれ異なる家事をおこなう。しかし自然と鼻歌は共有する。

その様子は、まぎれもなく家族の姿なのだ。