途中までは、皆、つくれるのです。ホリーにもつくれました。決して、先輩たちより腕が劣るわけではないのです。「あなたは勘がいいわ」とオーナーに褒めらたれこともありました。「若いときのわたしに似ている」とまで言われたのです。
 スープのつくり方は三段階に分かれていて、一つ目と二つ目の工程はホリーを除いた四人に任されていました。問題は三つ目で、こればかりは、オーナーが厳重に人払いをし、厨房を密室にして一人で仕上げるのです。
 ホリーは、その一つ目と二つ目の工程を任せてもらえず、彼女の役割はといえば、
「いい? あなたにはスープの見張りをお願いしたいの」
〈ガーデン〉で働き始めてすぐにオーナーからそう命じられました。スープの見張りというのは、三つ目の工程を終えたスープ鍋を、ひと晩中、見張りつづける仕事です。
「本当に舌のいいコックがつくりたてを味見したら、三つ目の工程で、どんなスパイスや食材を加えたか見抜けるでしょうね」
 オーナーはそう言いました。
「だから、三つ目の工程が終わったら、誰ひとり鍋に指一本触れないよう、見張ってほしいの。もし、あなたを押しのけて鍋に近づこうとするコックがいたら、すぐにわたしに教えて。ただちに辞めてもらいますから」

 そうした事情を知っているのか、先輩たちは見張り番のホリーを押しのけるようなことはしませんでした。
「そんな汚い真似をする必要はないからね」と二番目のコックが言いました。
「そう。私にはあのスープのレシピを引き継ぐ素養がある」と三番目のコックが言いました。
「何を言ってるんだ。レシピを引き継ぐのは、キャリアがいちばん長い私に決まってる」と一番目のコックが言いました。
 こういうとき、四番目のコックであるモズだけが話に加わりませんでした。彼はもともと気弱な性格で、口の達者な三人の先輩たちに圧倒されて、ひと言も話せなくなるのです。
 三人の先輩たちはホリーに対して常にきびしく、
「私たちがいる限り、君に順番はまわってこない」
「他のレストランで修業した方がいいんじゃないかな」
「ここにいる限り、君に望みはないよ」
 そう言われて、ホリーは首をすくめましたが、それらの言葉は自分にも向けられているのだろうと、モズもまたホリーと一緒に首をすくめました。