日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、いまの季節を彩る身近な植物を取り上げ、楽しく解説します。今回のテーマは「【秋桜】秋の訪れを告げる花」です。

本格的な秋の訪れを告げる花

この植物の花は、秋の訪れを告げるように、咲きはじめます。庭に育つ一株のコスモスが風に揺れながら花を咲かせる姿は、もの悲しく、秋の気配を感じさせてくれます。

何万本、何十万本のコスモスが植えられた高原に、ピンク、赤、白、黄、橙(だいだい)など色とりどりの花が咲きはじめると、本格的な秋の訪れを告げているようです。「なぜ、秋に花を咲かせるのか」という疑問が浮かびます。

コスモスは、もの悲しく秋の気配を感じさせる

秋は、コスモスにとって、花を咲かせるのにちょうどよい気温だからでしょうか。あるいは、暑い夏が終わったからでしょうか。あるいは、寒い冬が近づいてきているからでしょうか。この3つの中に、正解があるのですが、どれだと思われますか。

花が咲けば、タネができます。そのため、この疑問は、「なぜ、秋にタネをつくるのか」という疑問に置き換えられます。

タネの役割の一つは、植物の普通の姿では耐えられない、寒さや暑さなどの不都合な環境を耐え忍ぶことです。コスモスにとって、不都合な環境とは何でしょうか。コスモスは冬に枯れる、寒さに弱い植物です。だから、毎年訪れてくる不都合な環境とは、冬の寒さなのです。

そのため、コスモスは、冬の寒い期間をタネで過ごすために、秋に花を咲かせ、タネをつくります。コスモスが秋に花を咲かせる理由は、寒い冬が近づいてきているからなのです。

もしそうなら、すごく大きな疑問が浮かびます。「コスモスは、秋の間に、もうすぐ寒い冬がくることを知っているのか」というものです。

それに対する答えは、「はい、知っています」というのが答えです。それを知れば、次には、「どうして知るのか」という疑問が浮かびます。その答えは、「葉っぱが、夜の長さをはかるから」です。その答えを知れば、次の疑問は、「夜の長さをはかったら、寒さの訪れが秋の間に前もってわかるのか」です。

それに対しては、「はい、わかります」が答えです。たとえば、夏を過ぎると、夜がどんどん長くなり、もっとも冬らしく長い夜は冬至の日で、12月下旬です。一方、もっとも寒いのは2月です。