日本の草花を四季に応じて紹介する『日本の花を愛おしむ 令和の四季の楽しみ方』(著:田中修 絵:朝生ゆりこ 中央公論新社刊)から、いまの季節を彩る身近な植物を取り上げ、楽しく解説します。今回のテーマは「【萩】『万葉集』にもっとも多く登場する植物」です。

ハギは『万葉集』にもっとも多く登場する

この植物は、当時、人気の植物だったようです。『万葉集』に登場する植物は約160種類といわれますが、もっとも多いのが、ハギなのです。ハギは、『万葉集』では、多くの場合、「芽子」という文字で表記されています。

「なぜ、この植物が一番多く詠まれているのか」との疑問が浮かびます。この大きな理由は、「『万葉集』の歌の選者であった大伴家持(おおとものやかもち)が好きな植物だったから、多く選ばれただけ」といわれます。そのように説明されると、根拠がよくわからないままに納得せざるを得ません。

でも、「この花は、当時、髪飾りとして使われ、身近な植物であった」ともいわれます。そのため、人気のあった花だったのでしょう。それを裏づけるように、ハギは、秋の七草の先頭に詠まれています。

この植物は、マメ科の植物です。マメ科の植物は、空気中にある窒素を窒素肥料に変える力をもつ根粒菌(こんりゅうきん)を根に住まわせます。そのため、この植物は、痩せた土地でもよく育ち、古くから日本各地にたくましく自生しています。

夏から秋に、上品な赤紫色(まれには、白色)のチョウチョのような姿の花を咲かせ、人々に親しまれ愛されてきたのです。

上品な赤紫色の花。痩せた土地でもよく育つ