『図書室の海』恩田陸・著、新潮文庫

「いい学校描写」からは切なさや懐かしさがこみあげてくる

今回ご紹介するのは、「学校」の描写だ。

学校。それは簡単なようで難しい場である。

学校といえばある程度共通認識が存在する。みんな自分のなかの学校のイメージがある。
そしてなにより、本当にたくさんの物語の舞台になる。

正直、「学校」以上に物語の舞台になっている場なんて存在しないのでは!? と思うほどだ。

だからこそ、学校でなにかしら起こる物語を読むとき、「いい学校描写」に出会うと、私はにっこりしてしまう。

自分がよく知っている場所だからこそ、ああ学校の匂いがちゃんとする小説っていいなあ、と思う。学校の、ノスタルジックでありつつ、それでいて手触りのある描写。それを読むとき、映画で単に学校の風景をうつされるだけでは感じない、なんともいえない切なさや懐かしさがこみあげてくるのだ。

実例を紹介しよう。恩田陸の『図書室の海』所収の短編集「図書室の海」に収められた一場面だ。