人をひきつける文章とは? 誰でも手軽に情報発信できる時代だからこそ、「より良い発信をする技法」への需要が高まっています。文筆家の三宅香帆さんは、人々の心を打つ文章を書く鍵は小説の「名場面」の分析にあるといいます。ヒット作『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』の著者の連載。第16回は「食卓」の名場面について……

第15回「《学校》の匂いを感じさせる描写 ~恩田陸「図書館の海」に見る名場面」はこちら

人間に対する解像度を示すもの

小説を読む快楽のひとつに、「人間に対する解像度の高い物語を読むこと」がある。というか、私はほぼそれを楽しみに読んでいる、といってもまったく過言ではない。

「人間ってこうだよね」「世界ってこうだよね」「人生ってこうだよね」という、小説から漂ってくる、きめ細かな作者の理解に触れると、ものすごく癒される。自分は孤独じゃないなあ、と感じる。ちゃんと人間のことを深く細かく理解してくれている人が、ここにいる。とにかく、解像度の高い物語が読みたい。人間に対する解像度、そして世界に対する解像度の、高い話。

反対に、小説を読んでいていちばんがっかりする瞬間が、「に、人間に対する解像度が、低いっ……」と愕然とするときである。そりゃちょっと雑過ぎるんじゃないか、という行動をキャラクターがし始めると、途端に読者としては萎える。そういうものを読みたいわけじゃないのだこちとら……とページをぱたんと閉じることになる。

では、人間に対する解像度というのは、はたして何によって示されるものだろうか?

登場人物の台詞である場合もあるし、行動の場合もあるだろう。でも私は、ちょっとした風景の描写にも、解像度の高さというのは出てくるものだと思っている。

今回紹介するのは、はじめて読んだときに「解像度が、高い!」と感動した、とある食卓の場面だ。