玄米ブランが意味するもの
私が感動したのは、まあ、なんといっても、「玄米ブラン」である。
作者の性別どうこうというのは好きではないけれど、しかしここに限っては言いたい。「なんで朝井リョウはこんなに的確に朝ごはんをチョイスできるのか……!!」と。
この玄米ブラン、という食べ物には二重の意味があると思う。
ひとつめは、大学生っぽい食事であること。ちゃんと姉と朝ごはんを食べる時間はありながら、料理せずに食べられる簡単なもので、そこまでお金もかからなくて、しかしカロリーも低そうで……という条件を満たしたごはんといえば、玄米ブランである。「コーンフレーク」とか書かずに、「玄米ブラン」であることが解像度が高い(今だったら「オートミール」とか書かれるのかもしれない)。
そして理香は、おそらく緊張しいのところがあり、そのせいで胃腸が弱いらしい。「姉のかわりに同居人を探さなくてはいけない」と聞いたときから、便の出が悪い――緊張して便秘になってしまっているのだろう。それを気にして、食物繊維豊富な玄米ブランを食べている。そんなにおいしくない。でも、ぼそぼそと毎日食べている。いっこうによくならない胃腸を気にしながら。