撮影:宅間國博
国内にとどまらず、ハリウッド映画、ブロードウェイ・ミュージカルでも活躍を続ける俳優の渡辺謙さん。ハリウッド版『ゴジラ』最新作の公開を前に、役者として、そして親としての今の思いを聞いた。

娘にはそういう感情にならないのに、なぜか倅には力が入ったんだよなあ、ヤな感じ。(笑)

 

日本映画とハリウッド、一番の差は

僕が出演作を選ぶ基準は、まずストーリー、要するに脚本がいいこと。そして、いいディレクターと、いいキャストの3つが揃っているかということなんですね。5月31日に全世界同時公開される映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に関しても、単純なエンターテインメント作品ではなかったことが出演を決めた理由です。

この作品は2014年公開の『GODZILLA ゴジラ』のシリーズ第2作。前作に続いて、僕は生物学者・芹沢猪四郎博士役を演じます。前作は軍人が中心のドラマでしたが、今作は、僕の演じる芹沢博士ら科学者たちが最前線で奮闘するストーリーです。

要するに、みなさんにも馴染みがある、オリジナルの昭和のゴジラに近い。いかにしてゴジラが誕生したのか。また、人類や文明、環境などさまざまな部分での問題や哲学が描かれています。

ゴジラをはじめ、怪獣たちの制御がきかなくなったら世界はどうなるんだろうという不安。これは今われわれが直面している、たとえば自然災害のような人知の及ばないことや、人間にとっては有益なものであるはずのAIの制御がきかなくなったら人間を凌駕してしまうんじゃないかといった不安とも通じます。それは原子力なども同じ。

どんなにテクノロジーが進んでも、未来に対する不安は、いつの時代にもあるものだと僕は思う。そういうテーマに僕ら俳優がきちんと向き合ったうえで、社会に一石を投じられるような力がその作品にあれば、やる意味があると思っています。映画や舞台、ドラマにかかわらず。

50代半ばになって「ブロードウェイで『王様と私』をやりませんか?」と言われた時、最初は「何で今、『王様と私』なんだろう」と思いました。

でも、その時に演出家が、「今はアメリカが国境に壁を作ったり、イミグレーション(移民)を制限したり、いろんな国で“自国第一主義”の動きが強まっている。これだけ不寛容な社会というのは19世紀と変わらないんじゃないか。性差別の問題も、今なお変わらず存在する。はたしてこの時代に生きるわれわれの幸福感って何だろう。そういう時代だからこそ、『王様と私』は単なる淡いラブストーリーではない、今の時代に問い直せる大きなファクターがあるんだ」というビジョンを語ってくれたんです。

それを聞いた時に、21世紀になっても、もう一度この作品を通してさまざまな問題を世の中に問うことには意義がある、と思って快諾しました。