人をひきつける文章とは? 誰でも手軽に情報発信できる時代だからこそ、「より良い発信をする技法」への需要が高まっています。文筆家の三宅香帆さんは、人々の心を打つ文章を書く鍵は小説の「名場面」の分析にあるといいます。ヒット作『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』の著者の連載。第17回は「職場」の名場面について……

第16回「《食卓》に上るメニューで解像度を高める ~朝井リョウ「何様」に見る名場面」はこちら

小説に職場を書くのは難しいのかもしれない

学校と並んで、多くの人が経験したことのある「場所」。それは、職場である。
……とひとくちにいっても、職場なんて、千差万別に決まっている。

みんな業種も違えば雇用形態も違っているわけだし、職場とは、学校よりもさらに差が大きい場所なのではないだろうか。

しかしそれでも私たちは、職場が小説に出てくると、なんとなく厳しい目線で見てしまうような気がする。えっ、こんな職場、リアリティないんじゃない? と。

こんな夢みたいな職場ないよな~とか、なんかご都合主義に感じちゃうよな~とか。小説のなかに出てくる職場を脳内で映像化するときに、自分が知っている職場をつい基準にしてしまうからだろう。

だからこそ小説に職場を書くのは、もしかしたら難しいのかもしれない。だって、これは現実と違うじゃん、って思われやすいから。