来る2023年、中公文庫は創刊50周年を迎えます。その記念プレ企画として、本連載では「50歳からのおすすめ本」を著名人の方に伺っていきます。「人生100年時代」において、50歳は折り返し地点。中公文庫も、次の50年へ――。50歳からの新たなスタートを支え、生き方のヒントをくれる一冊とは? 第6回は、生命科学者の仲野徹さんに伺います。

仲野徹(なかの とおる)

生命科学者。
1957年大阪生まれ。大阪大学医学部医学科卒業後、内科医から研究の道へ。ドイツ留学、ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)研究員、京都大学医学部講師、大阪大学微生物病研究所教授を経て、2004年から大阪大学大学院医学系研究科教授。専門は病理学。2012年、日本医師会医学賞を受賞。著書に『エピジェネティクス』、『こわいもの知らずの病理学講義』、『仲野教授の笑う門には病なし!』など。〔写真撮影:松村琢磨〕

60年前のタイムカプセルを開いてみれば

人生を俯瞰しようと、『一度しかない人生を「どう生きるか」がわかる100年カレンダー』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を参考に、100年カレンダーなるものを作ってみた。生まれた時から現在まで、何があったかを書いた付箋をカレンダーに貼り付けていく。

結婚、就職、異動、二人の子どもの誕生、留学と、20代の後半からの10年間は公私ともに本当にいろんなことがあった激動の時代だ。そして、40代の後半からの10年間は信じられないくらい忙しく働いていた。時の過ぎゆくままに身を委ねて来たとは思わないが、まとめて眺めてみないとわからないことも多い。あぁそうやったんやと初めて気付くことがたくさんあった。

過去のことですらこうしてみないとわからないのだから、未来のことなどわかろうはずもない。10年前の自分に尋ねてみたい。医学関係の本だけでなく、いろんな本を出すようになる。時々だけれど、テレビやラジオに出演する。ノンフィクションの書評を発表するようになって、読売新聞の読書委員を務める。きっと、なにをアホなことをと一笑に付すに違いない。だが、なんとそれが現実だった。

さして長生きしたいとは思わない。しかし、未来の社会がどうなっているかは覗いてみたい。それには、渡辺真知子のヒット曲『迷い道』の歌詞「現在・過去・未来」じゃないけれど、「現在」と「過去に予測された未来」を比べてみるのがヒントになるかもしれない。

『21世紀への階段 40年後の日本の科学技術』は、60年も前の1960年――だから50歳代の人にとっては生まれる少し前に出版された本だ。いまは無き科学技術庁の監修で、当時の長官だった中曽根康弘がプロローグを書いている。その復刻版が、半世紀の後、2013年に出版された。もちろん、我々はその間の科学技術の進歩を知っているのだから、「過去に予測された未来」とリアルとの答えあわせができる。さて、どの程度予測があたっていただろうか。まずは、私が専門とする医学について見てみよう。