イギリス在住のブレイディみかこさんが『婦人公論』で連載している好評エッセイ「転がる珠玉のように」。ウェブオリジナルでお送りする今回は「ダウンの終わりはアップの始まり」。息子の進学のためカレッジのオープン・デーに出かけたブレイディさん。そこで思いがけず息子の成長に触れてーー

英国のカレッジ教育

息子が今年の9月からカレッジに入る。カレッジというのは、日本でいう高校や専門学校のようなもので、5年間(日本でいう小学校6年生から高校1年生の年齢まで)の中学校教育を終えてから、2年間、大学進学のために勉強したり、就職するために専門の分野を学んだりする学校だ。

カレッジでは生徒が自分で教科を選んで入学できる。大学で教わりたい学科に関係する教科のコースを3つか4つ選ぶのがふつうで、各カレッジは秋になると、1年後に進学する最高学年の中学生を対象にオープン・デーやオープン・イブニングを行う。これは、生徒と保護者がカレッジを実際に見に行って、各教科の教室に立っている教員たちや在学生たちからコースの説明を受けたり、個人的に質問したりできる機会である。

ちょうど息子が小学校から中学校に進学したときのように、今回も親子でいくつかのカレッジのオープン・デーに出かけた。近所のカレッジから街中にあるカレッジまで、優秀と言われるカレッジからそうでもないカレッジまで、それぞれに個性があって面白かった。カレッジでは、学生たちは一日中、学校にいなければいけないわけではなく、自分が取った教科の授業だけ受ければ、後は自由行動だ。校内もキャンパスと呼ばれ、日本でいう高校というより大学のようだ。わたしは高校時代に不良で、「出たくない授業のときは図書館で本を読んでいていいからとにかく学校に来い」と担任の先生に言われてようやく卒業できたが、いま考えてみると、あれは英国のカレッジ教育みたいなものだったのかもしれない。