コロナ禍により政治の教室が人気に

で、驚いたのは、どこのカレッジでも「POLITICS(政治)」の教科の教室が人気だったことだ。ある政治の教員は「コロナ禍前と明らかに違う」と言っていた。2020年はロックダウンによりオープン・デーを開催できなかったので2年ぶりになるが、以前は政治の教室は閑古鳥が鳴いていたらしい。しかし、なぜか今回は政治に関心を持っている中学生たちが多く、びっくりしていると言っていた。長い休校や入試方法の変更など、政府の決断にこれほど未来を左右された世代はいないので、みんな政治に興味を持つようになったのではないか、と教員は推測していた。

近所のカレッジの政治の教室には、たいへんわたし好みである本が教材として並んでいて、ケン・ローチのドキュメンタリー映画『1945年の精神』のDVDもあった。「これ、日本語版の字幕監修、母ちゃんがやったんだよ」などと興奮して話していると、息子がそこはかとなく冷ややかな目をして見ている。この感じは、既視感があるなと思った。中学に進学するときも、学校見学会に一緒に行って、中学生たちのバンドの演奏を聞いてノリノリになっていたわたしを、このような目つきで息子が見ていたからだ。結局、その中学に息子が通うことを決めた背景には、あのときのわたしの影響があったのではとずっと思っていた。

だが、15歳の息子はこう言い放った。

「今回は5年前とは違うから。僕はこのカレッジは選ばない。自分が決めたところは別にある」

おお、と思った。「あなたがどう思おうと関係ない。自分は自分の道を行く」と言えるようになったのだ。正直、ここまで来ればもう子育ては終わったも同然だろう。