人をひきつける文章とは? 誰でも手軽に情報発信できる時代だからこそ、「より良い発信をする技法」への需要が高まっています。文筆家の三宅香帆さんは、人々の心を打つ文章を書く鍵は小説の「名場面」の分析にあるといいます。ヒット作『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』の著者の連載。第18回は「買い物」の名場面について……

第17回「矛盾の無い家賃と手取りが《職場》の描写に信頼をもたらす ~朱野帰子「わたし、定時で帰ります。―ライジングー」に見る名場面」はこちら

がんがんモノを買う場面を読みたい

買い物、好きですか。私は好きです。

いや、好きだけど悩むことも多い。本や漫画のように、自分が欲しいものがすぐにわかって、比較的ぽんぽん買いやすいものならいいのだが。洋服や靴になると、一気に悩む割合は増える。必要な予算も高けりゃ、身に着ける機会も多い。どうするかな、とものすごく悩む。


しかし、だからこそ! 小説の中でくらい! 豪快な買い物が見たい、という欲望はいつまで経っても消えない。

がんがんモノを買う場面を読みたい。そしてあわよくば自分も買った気になりたい。豪快なお買い物小説、誰か書いてくれないかなあ、と思うときがよくある。

というわけで、ひとつでもこの世に買い物シーンが増えてほしいので、今回は、私が好きな「買い物」の名場面を紹介したい。

この世に買い物は数あれど、やっぱり日本で豪快な買い物といえば、デパートですよ。