暇つぶしで編み出した「広告で実況ごっこ」

放課後や休日は、恐ろしく暇だった。

家には本もゲームもおやつも何もない。

おまけに家には父がいる。母はパートに出ており、小学校から帰ると父と二人っきりになってしまう。

安心して帰れる家が私にはなかった。

(コロナ禍でSTAY HOMEが叫ばれ、教育のオンライン化が進む度、自分と同じ境遇にある子たちのことを憂いたりする)

だから、よく友達の家に行った。友達の家と言っても、過疎地の広大な校区なので、10キロ近く離れている。 

友達の家には、あらゆるものがあった。漫画に図鑑にWiiにDS。お菓子にジュース。

どの家にも必ず、着物かドレスアップした家族写真もある。

友達の家に行けない時の暇つぶしで編み出したのが、「広告で実況ごっこ」だった。

父が新聞配達をしている時期があり、その時は新聞と広告チラシが家にあった。

チラシを抜き出して、「えー今週のおすすめは、こちらぁっ!!!」と、通販番組風に一人で解説していた。

今思えばシュールでわびしいが、当時本当にやることがなかったのだ。

また、季節の行事にも縁がなかった。みんながサンタを信じているかという話をしているのを聞いて、どうやらみんなはクリスマスプレゼントをもらっているらしいということを知った。

年明けの登校日、みんながもらったお年玉の額を発表しあっていて、お年玉がもらえる世界線に心底驚いたものだ。

というのも、親戚との繋がり、といえるものが私にはなかったのだ。