姉の叱咤激励で吹き飛んだ不安

二次試験の前日、私は泣きべそをかいていた。 
数日前に一緒にいた人がインフルエンザだったとわかったからだ。

明日で全てが決まる。精神的には極限状態で、まともな思考ができず、不安が雪崩のように押し寄せ、それに飲まれていた。

いつ自分も熱が出るだろう。そう思うと、こわくてこわくて、しかたがなかった。

姉に電話で泣きつくと、電話の向こう側で姉が猛烈に怒り始めた。

「大丈夫! やりきって倒れたらいいじゃない! 弱気になってどうするの! あんたは大学に行ける。うちの家からしたら、ここまで来るだけで奇跡なんだから!」

普段あまり感情を出さない姉らしからぬ、強烈な叱咤激励だった。
頬をぶたれたような衝撃とともに、不安は一気に吹き飛んだ。
そう、もうここまで来たのだから、這ってでも試験を受けて、全力をぶつけるしかないのだ。

試験当日は、冬はずっと曇っている地元とは対極な、穏やかな晴れだった。

結局体調は安定し、無事に終わったが、大学から駅に向かう私は放心状態だった。
頭に浮かんだのは、「落ちた」という確信。

1科目目は得意科目で、問題も赤本通り。正直ほぼ取れた、という感触があった。
しかし、問題は2科目目。
赤本よりはるかに難易度が高く、頭が真っ白になった。
完答できた問題はなく、部分点すら怪しい。
センターでアドバンテージがないのに、二次試験で挽回できないなんて。

終わった。

人は本当にヤバイ現実を突きつけられると、無になるのだな、と悟った。
もはや悲しみさえ沸いてこず、ただただ呆然とするだけだった。