人をひきつける文章とは? 誰でも手軽に情報発信できる時代だからこそ、「より良い発信をする技法」への需要が高まっています。文筆家の三宅香帆さんは、人々の心を打つ文章を書く鍵は小説の「名場面」の分析にあるといいます。ヒット作『文芸オタクの私が教えるバズる文章教室』の著者の連載。最終回は「どんでん返し」の名場面について……

第19回「《異世界》ほど小説家の技量が試される舞台は無い ~酒見賢一『後宮小説』に見る名場面」はこちら

どんでん返しに必要な技量とは

どんでん返し、好きですか!?

私は「おおっ」と思わせてくれるどんでん返し、好きです。……そりゃ「おおっ」と思わせてくれたらみんな好きか。

でも、やっぱり「おおっ」と思わせるかどうかって、当たり前だけど技量が必要ですよね。


じゃあそれは、どのような技量なのか。

どんでん返しや、推理小説の謎解き、あるいはサスペンスなどにおける「物事がひっくり返る瞬間」を小説に描く時……。私は、そこに至るまでの「導入」が重要なのではないか、と思っている。

今回は、そう思わせてくれる名場面をご紹介したい。

扱うのは、京極夏彦の『死ねばいいのに』。タイトルもインパクトたっぷりの小説だが、中身はもっと凄い。

ある女性の不可解な死をめぐって、関係者六人分の「語り」が綴られている。そしてそれを聞いてまわるのは、ただのチャラそうで失礼な雰囲気の男性。はたして彼は、何者なのか? なんのために女性の殺人の真相を知りたいのか? そして関係者たちは、彼に何を語るのか?